本記事は、Windows Server 2019 上のドメイン コントローラーから、Windows Server 2025 上の新しいドメイン コントローラーへ Active Directory / DNS / DHCP / AD CS を移行した際の手順メモです。
1. 想定構成
- フォレスト/ドメイン構成:単一フォレスト・単一ドメイン
- 旧 DC(Windows Server 2019):
- ホスト名:
【旧DCホスト名】 - 役割:AD DS、DNS、DHCP、AD CS
- ホスト名:
- 新 DC(Windows Server 2025):
- ホスト名:
【新DCホスト名】 - 役割:AD DS、DNS、DHCP、AD CS(移行後)
- ホスト名:
- ドメイン名:
【ドメイン名】
注意:
AD のバージョンアップを伴う DC 追加では、最初の新 OS DC の昇格時にスキーマ更新が走るため、 作業ユーザーは Enterprise Admins および Schema Admins グループに所属している必要があります。
2. 全体の移行フロー
- 新サーバー
【新DCホスト名】を既存ドメインに参加させる 【新DCホスト名】を追加ドメイン コントローラー(AD DS + DNS)として昇格- レプリケーション・ヘルスチェック
- FSMO 役割を
【旧DCホスト名】から【新DCホスト名】に移行 - PDC Emulator となった
【新DCホスト名】の時刻同期設定を調整 - DHCP 設定をエクスポート/インポートして
【新DCホスト名】に移行 - AD CS(証明書サービス)をバックアップ&リストアで移行
- 旧 DC
【旧DCホスト名】を降格し、必要であれば廃止
3. 事前準備
3.1 バックアップ
【旧DCホスト名】のシステム状態バックアップ(AD DS 含む)- AD CS のデータベース・秘密鍵のバックアップ
- DHCP 設定のエクスポート(後述のコマンドを利用)
3.2 AD ヘルスチェック(旧 DC 側)
dcdiag /v > C:\temp\dcdiag_旧DC.log
repadmin /replsummary > C:\temp\repl_旧DC.log
repadmin /showrepl * /csv > C:\temp\repl_detail_旧DC.csv
3.3 FSMO 役割の確認
netdom query fsmo
移行前は全て 【旧DCホスト名】.【ドメイン名】 を指していることを確認。
4. 新 DC の追加(AD DS + DNS)
4.1 新サーバーをドメインに参加
【新DCホスト名】に固定 IP【新DCのIPアドレス】を設定- DNS サーバーには既存 DC(
【旧DCホスト名】)の IP を指定 - コンピューターを
【ドメイン名】に参加させる
4.2 AD DS ロール追加&昇格
まずロールを追加。
Install-WindowsFeature AD-Domain-Services -IncludeManagementTools
続いて、既存ドメインの追加ドメイン コントローラーとして昇格。
Install-ADDSDomainController `
-DomainName "【ドメイン名】" `
-InstallDns `
-Credential (Get-Credential) `
-SafeModeAdministratorPassword (Read-Host -AsSecureString "DSRM password")
昇格ウィザード中の「前提条件チェック」で、
- 赤エラー(Enterprise Admins / Schema Admins 関連)が出ないこと
- 「DNS 委任を作成できない」黄色警告のみであること(単一ドメイン環境では無視してよいケースが多い)
問題なければインストールを実行し、自動再起動後に新 DC となる。
4.3 レプリケーション確認(新 DC 側)
dcdiag /v > C:\temp\dcdiag_新DC.log
repadmin /replsummary > C:\temp\repl_新DC_replsum.log
repadmin /showrepl * /csv > C:\temp\repl_新DC_repldetail.csv
明らかな失敗(FAIL)がないことを確認。
5. FSMO 役割を新 DC に移行
5.1 移行前の状態
netdom query fsmo
移行前は全て 【旧DCホスト名】.【ドメイン名】 を指す。
5.2 移行コマンド
【新DCホスト名】 上で、管理者 PowerShell から実行。
Move-ADDirectoryServerOperationMasterRole -Identity 【新DCホスト名】 `
-OperationMasterRole SchemaMaster, DomainNamingMaster, PDCEmulator, RIDMaster, InfrastructureMaster
確認ダイアログが5回出るので Y または A で進める。
5.3 移行後の確認
netdom query fsmo
全ての役割が 【新DCホスト名】.【ドメイン名】 に変わっていれば移行完了。
6. PDC Emulator の時刻同期設定
FSMO の PDC Emulator を持つ DC は、ドメイン全体の時刻の基準となる。 【新DCホスト名】 で外部 NTP サーバーと同期するよう設定する。
w32tm /config `
/manualpeerlist:"ntp.nict.jp,0x9" `
/syncfromflags:manual `
/reliable:yes `
/update
net stop w32time
net start w32time
w32tm /resync
外部 NTP サーバーは環境に応じて変更する。
7. DHCP の移行
7.1 旧 DHCP サーバーからのエクスポート
【旧DCホスト名】 上で、管理者 PowerShell から実行。
Export-DhcpServer -ComputerName 【旧DCホスト名】 `
-File "C:\temp\dhcp-旧DC.xml" `
-Leases -Force
生成された C:\temp\dhcp-旧DC.xml を 【新DCホスト名】 にコピー。
7.2 新 DC に DHCP ロールを追加
Install-WindowsFeature DHCP -IncludeManagementTools
ロール追加後、新 DHCP サーバーを AD に承認。
Add-DhcpServerInDC -DnsName "【新DCホスト名】.【ドメイン名】" -IpAddress 【新DCのIPアドレス】
7.3 DHCP 設定のインポート
Import-DhcpServer -ComputerName 【新DCホスト名】 `
-File "C:\temp\dhcp-旧DC.xml" `
-Leases `
-BackupPath "C:\DhcpBackup" `
-Force
DHCP 管理コンソールで、スコープ・予約・オプションが正しく取り込まれているか確認する。 特にオプション 003(デフォルトゲートウェイ)、006(DNS サーバー)は要チェック。
7.4 スコープの切り替え
【旧DCホスト名】側の DHCP スコープを「停止」する【新DCホスト名】側の同一スコープを「有効化」する
これにより、新規リースは 【新DCホスト名】 から配布されるようになる。 DNS サーバーとしても 【新DCホスト名】 を配布すれば、クライアントの名前解決も順次新 DC に切り替わる。
8. AD CS(証明書サービス)の移行(概要)
AD CS は環境依存が大きく、詳細手順は別記事に分けた方がよいが、ここでは概要のみ記載する。
8.1 旧 CA のバックアップ
【旧DCホスト名】 上で実行。
certutil -backupdb C:\CAbackup
certutil -backupkey C:\CAbackup
reg export "HKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Services\CertSvc\Configuration" C:\CAbackup\CA-registry.reg /y
C:\CAbackup ディレクトリをまるごと 【新DCホスト名】 にコピーする。
8.2 新 DC に AD CS ロールを追加
Install-WindowsFeature ADCS-Cert-Authority -IncludeManagementTools
その後のウィザードでは、旧 CA と同じ種別(エンタープライズ ルート / 中間)を選び、 「既存の秘密キーを使用する」を選択してバックアップから復元する。 DB ファイルとレジストリの復元、CRL 配布ポイント(CDP)や AIA の設定確認などを行う。
注意:
CA 名や CDP/AIA の URL を変更すると、既存クライアントとの互換性に影響が出る場合があるため、 可能な限り旧構成を維持したまま移行することを推奨。
9. 旧 DC の降格と廃止
AD DS / DNS / DHCP / AD CS が新 DC で正常に動作していることを十分に確認してから、 最後に旧 DC 【旧DCホスト名】 を降格する。
9.1 降格操作
サーバー マネージャーから「Active Directory ドメイン サービス」を削除するか、PowerShell を使用。
Uninstall-ADDSDomainController -DemoteOperationMasterRole:$true
再起動後、必要に応じてドメインからコンピューター アカウントを削除し、サーバーを廃止する。
10. まとめ
- まず新 DC を追加して AD レプリケーションを安定させる
- FSMO 役割を新 DC に移行し、PDC Emulator の時刻同期を外部 NTP に向ける
- DHCP をエクスポート/インポートで安全に移行する
- AD CS はバックアップ&リストア方式で慎重に移行する
- 全ての役割が新 DC に移ってから旧 DC を降格する
この流れを守ることで、サービス停止時間を最小限に抑えつつ、 Windows Server 2019 から Windows Server 2025 への AD 基盤移行を安全に実施できる。


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